番外編 No.014
「新緑の上越国境を往く旧客回送」 松川橋梁俯瞰

上越線 土樽〜越後中里

 松川ループの名で知られる上越線の越後中里〜土樽間。実際にループ線となっているのは上り線だけだが、上下線どちらも山区間らしいカーブや橋梁を連続で越えて行く姿は魅力的である。

 新潟方面行の客車回送は時折設定されるものの、国境区間を午前中に通過するスジはほとんど無かった。「午前の光線で山越えをしている客レを撮る」という夢は叶わぬまま終わると思っていた矢先、新潟駅130周年記念号の送り込み回送が運転日当日の午前中に設定された。

 思い描いていた理想通りの時間帯。それもよくある冬枯れのどうしようもない3月では無く、新緑が芽吹いた後の5月中旬というベストな時期の運転。話を聞いた瞬間から、この日だけは絶対に他の予定が入らないよう日程を死守した。

 迎えた当日、天気は願った通りのド快晴。そうなれば目的地はただ一つ。いつものキハ撮りメンツと当日打ち合わせの上、下界で数名と落ち合い、懐かしい縦走スタイルで松川地区を見下ろせる尾根筋を目指した。

 少し登り、振り返ると神楽、苗場の雪山が出迎えてくれる。手前に新緑の山、向こうに雪山が見えてくる感覚すらも懐かしさを感じ、しばし感傷に浸る。途中、尾根筋の分岐点で別アングルに向かう友人と別れ、荒沢山方面を目指す。登山開始から2時間強で目的地に到着した。

 上越国境らしい線形を往くEF64-1000牽引の客車列車。車両を強調した望遠横アングルと、稜線まで広くいれた縦アングルの2台でそれぞれ迎える。新緑の山々と水が徐々に入る田が春を感じさせる、土樽松川の鉄道風景を収めることができた。