番外編 No.003
「岩切ロンチキ最終運用」 白石ストレート

東北本線 白石〜越河     

 自身にとって、東北の工臨ほど難易度の高いものはなかった。

 というのは冗談だが、なんせED75の工臨が走る場所といえば東北や秋田。たとえ当たりスジの工臨目当てで平日休みを取っていたとしても、そんな場所で晴れ予報が出てしまえば、予定を変えて架線がない場所に向かってしまうことが大半だった。

 元から貨車より客車、ロンチキより短チキ、電化より非電化という趣向だったため、ED75+ロンチキの編成を真剣に狙っていなかったというのも原因の一つではある。そして先述の通り、季節や天気によってはキハが最優先となった。そのようなことをしているうちに後回しにされ続け、納得のいく快晴カットは一向に増えなかった。

 そして非情にも、メインのキハ撮影が落ち着けば後回しにしていた撮りたいものに手を回せるだろうという甘い考えも通用しなく、東日本の工臨列車にまで引退の話が出てしまった。

 そんな中、岩切ロンチキの最終運用と噂される列車が、何本かある当たりスジの一つで運転されようとしていた。夕方に郡山へ向けて上るスジ。編成をガッツリ狙うのには最適のスジだった。最終運用になってノコノコ現れる「なんとか鉄」にはなりたくないとの思考も頭をよぎったが、余計なことは考えないことにして、仕事の休みを申請した。

 迎えた当日、仙台地区の予報は晴れベースで夕方にかけて快晴へ向かう予報だった。今までなら会津地区で朝練をして、昼頃に転戦するか残留するか悩み残留していたパターンだが、今回は状況も違う。津軽線が快晴になりそう…との考えも今回は切り捨て、東北本線の線路際へ出向いた。

 背景の山のバランスや架線柱の形などを考慮し、おそらく沿線で最も混雑していた場所で勝負に出る。少しだけ沸いていた雲も完全消滅し、通過の30分前には完璧な秋晴れとなった。

 コテコテの夕陽光線で作られる秋の色と共に、歴史の生き証人を写し込むことができた。