キハ40系 No.013
「寒空の大煙突と夕張支線」 稚南部俯瞰

夕張支線 鹿ノ谷〜清水沢

 2019年、夕張までの鉄路がついに廃線となった。その沿線には、かつて炭鉱の街として栄えた跡が所々に残る。抜け殻となった団地、電線の外された鉄塔、かつて複線だった頃のトンネルの跡もあり、ロケハン中にも山中でいくつか“それらしきモノ”を見かけた。

  鹿ノ谷駅の南側、映画「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地として残される観光地のそばには、大煙突と呼ばれる煙突が聳え立っていた。これの正体はかつてのコークス炉の煙突ようで、観光案内には高さ63mと記されている。この目を引く産業遺構と夕張支線の列車を一緒に写すことができたのが稚南部トンネル付近の斜面だった。

 夕張支線最後の冬。ロケハンだけに留まり雪景色で撮れずにいた場所を巡るべく、夕張の地を訪れた。この日は朝から雲ひとつない快晴。木々への着雪こそ無いが、俯瞰で撮るにはまだ悪くない条件だった。

 朝は鹿ノ谷駅付近の俯瞰を数ヵ所周り、午前最後の便狙いで稚南部トンネル付近へと向かう。尾根までは登らず、少し低めの立ち位置。横構図と縦構図との2種類で構え、列車を待つ。

  産業の発展を支え、長く夕張の街を見守り続けた煙突と、間もなく同じ境遇を迎えようとする列車を重ね合わせ、そっとシャッターを落とした。