キハ40系 No.005
「初雪の浅草岳と只見線」 田子倉湖畔

只見線 田子倉〜大白川

 この年は田子倉の紅葉が最高潮を迎える時期に、浅草岳で少し早い初雪が降った。

  何年かに一度見られる奇跡的な絶景。まだ線路の繋がっていた第八橋梁を横目に只見を目指し、途中で雪山の存在を確認。つづら折りを超え、意気揚々と撮影に臨んだ。

 しかし本番は列車だけが見事に真っ黒に沈み、理想は儚く散ってしまった。 その日一緒にいた知人とは当日中に帰る約束をしていた為、知人の車で帰路全区間の運転担当をしながら帰宅した。

 だが、その道中で既に決意は固まっていた。 帰宅後に風呂と最低限の荷物入替えだけを済ませ、早々に自車のエンジンをかける。家を出発する頃には日付も変わっていた。それでもメインには余裕で間に合う時間。今から考えると恐ろしい体力を持っていたが、それでも福島県内に入った頃からは相当眠く辛かったことを覚えている。

 なんとか田子倉湖に沈むことなく目的地まで車を走らせ、数十時間ぶりに同じ場所へ。 運良く間に合った始発から撮影を開始。ここで仮眠に入ったら大変なことになるので、少し早めに待機。

 本番まで残り1時間、浅草岳には霧だか雲だかわからないものが纏わり付き、西側から流れてくる雲は太陽を何度も隠す。回復傾向なのは間違いないが、不安が絶えない。 通過10分前。やっと最後の雲が消滅し、浅草岳が完璧に姿を現した。

 しばらくして山々にタイフォンが響く。感動だった。 現地で居合わせた知り合いや友人らと抱き合い飛び跳ね、何度も画像を見返した。今考えれば、 おそらくこの辺りから本格的に沼にハマってしまったのだと思う。10年以上続く、深すぎる世界へ。